ロングテール後も栄える小売

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ロングテールはもともと統計学における発生分布の曲線の形を指すものですが、ビジネスでは音楽作品販売のApple社iTunes、書籍販売のAmazonなどのように、売れ筋ではない商品にも販売機会を提供できる小売の仕組みを意味します。ロングテールを可能にした要素をあげると:

  • インターネットや検索技術の普及
  • 広大なウェアハウス、もしくは生産者から直送する仕組み
  • 配達業者との連携

の3点でしょう。

店舗による小売では販売面積が限られてますので、売れ筋商品しか流通上生存できず、販売棚に残らなかった商品は「死に筋」と呼ばれ文字通り死んでゆくしかありませんでした。

店舗販売によるモデルでは生産者と消費者双方に満たされないものがありました。生産者はある一定多数に求められない商品は、少数の消費者に本当に求められていると知っていても生産することができませんでした。また消費者も売れ筋商品しか購入の選択肢がありませんでした。

レア商品や特殊カテゴリに特化した店舗もありましたが、顧客はローカル商圏に限られ、その商圏の消費者も店舗の嗜好や売場面積により選択肢を制限されていました。

ロングテール販売が小売の主流の一部となると、それまで生産者、小売店、消費者に課せられていた商品の選択肢に関するあらゆる制限が取り払われました。生産者は全国規模で顧客を持つことができ、小売店はほぼ無限の商品の選択肢を顧客に与え、消費者はキーワード入力と数クリックで、特殊な商品でも数日で、早ければその日のうちに手にすることができるようになったのです。

インターネット産業が急激に成長していた90年代後半当時は雨後のタケノコのようにあったロングテール小売り業者も、業界が成熟するに従い、トップ数社に寡占されました。そしてロングテール前の小売の多くは規模の縮小か市場からの撤退を余儀なくされました。また寡占の結末として価格降下圧力による生産者の収益低下が起こっています。

ロングテール後も栄えることができる小売りビジネスモデル、それは商品の小売を行う誰もが真剣に考えています。その参考に一つのケーススタディを。

福岡の大橋に Organ69 オルガンロック というビンテージオルガンの販売が専門の会社があります。主に60年代後期~70年代前期に生産されたオルガンを取り扱っており、ウェブサイトで全国に商品在庫情報を公開しています。

世界中のビンテージオルガン業者とインターネットでつながり、製品が市場にでてきたら落札入手します。再販に必用な整備や修復を行い、Organ69と代表の松末氏の高い信用とともに製品が全国のお客様の所に送られます。在庫品に対する問い合わせも世界中から届きます。福岡市にいながらグローバルなビジネスを展開しているのです。

通常ビンテージ製品の購入で心配なのは、メーカー保証がない、もしくはメーカー自体がすでに存在していないない中、故障や破損などの際に製品への投資が失われないか?ということです。松末代表は自から製品の整備を行い、交換部品はできるだけ同じ型番を使って復元していきます。松末代表とお会いすると「ビンテージオルガンのことをこんなに深く愛してるんだ」と感じることができます。それはきっとOrgan69と取引の際に会話するお客様にも伝わっているのでしょう。「安心」や「信頼」という決してロングテール小売店では販売できないものを、製品と一緒にお客様に届けているのです。

Organ69社から学べることをまとめると

  • 研ぎ澄ました独自の商品カテゴリでプレーする
  • そのカテゴリでトップになる
  • 商圏を国内だけでなくグローバルに
  • 商品に「信用」「安心」などの付加価値を付けて流通させる

さらに追加するとすれば、

  • 商品カテゴリで一番ハートが熱い

ことでしょうか。そしていかに

  • 低固定費で事業運営していく

かということです。事業のコアスキルは会社の少人数スタッフで保持しており、人件費や倉庫賃貸など高い固定費を追加することなく次のステージまで成長が可能であることは大きなプラスとなります。テールビジネスは大数の法則が当てはまらない分、市況は常に乱気流になりがちです。松末代表はそのような状況でも軽快に飛行できる会社運営をされていました。

小売りとは最終消費者に商品を購入していただく取引で、その在り方次第で業界経済を大きく左右します。音楽業界における次世代の小売りモデルを仲間と一緒に考え、作っていきたいですね。